GRAZ
輸入車販売のショールーム兼オーナー住居である。施主は1階に車の展示のための大空間を、2階住居にも家族が自然と集まるような大空間を望んだ。しかし、ただ大きくするだけでは居心地が悪い。そこで我々は1階には車が1台ずつ、2階にはそれぞれの室に必要な家具や庭がほどよく入るパーソナルなスペースを集合させ、個別的でありながら一体的な大空間を提案した。
各スペースの形状は車を鑑賞しやすいように六角形を採用。そのうち3つの角にバランスよく「くの字」型の壁柱を配置して、残りの3つの角は視線が抜けるようにアーチ状に切り抜いた。これは最大曲げモーメントが生ずる柱接合部で断面積最大となる合理的な形であり、応力図を素直に躯体形状に置換したものである。
仕上げについては内外共に土と木の自然素材で構成しようと考えた。一般的に車のショールームは、石や金属パネルなどの平滑性の高い仕上げによって空間と車をなじませるが、それが居心地を悪くしていた。しかし、ただ土と木を使っても、金属とガラスで覆われた車とは雰囲気が合わない。そこで様々なスタディの中で、用いる素材の硬質感を繊細に操作することで、車の素材感と建築空間を調和させることを思い立った。桜川砂利を混ぜて、半分石で半分土のような中間的な表情とし、さらに壁の角を出すことで見た目の硬さを表現した。床の仕上げは硬いカリン材のブラッシング仕上げとして、傷の発生を抑えつつ、木の温かさを持たせた。
2階の住居も1階と同様に、個別的でありながら一体的な大空間が広がっている。ダイニングにはテーブル、リビングにはソファ、アトリエにはデスクといった具合に、各空間に1つの機能を振り分けた。各部屋には道路の騒音を遮断しながら光と風を室内に取り込む内庭を設置した。六角形の強い領域性が内外に連続するため、内外があいまいな空間が生まれた。
家族は隣り合う空間へ意識を向け、見えなくとも家族の気配を感じながら生活できる。
- Completion
- 2012.12
- Principal use
- Showroom and Residence
- Structure
- Reinforced Concrete
- Site area
- 608㎡
- Total floor area
- 682㎡
- Building site
- 2-36-6, Todoroki, Setagaya Ku, Tokyo
- Structure design
- yAt Structural Design Office
- Contractor
- SATOHIDE
- Lighting
- Shinji Yamaguchi / On & Off
- Pendant Light
- Yudai Tachikawa / t.c.k.w
- Books and Accessories Select
- Toshie Tanaka
- Team
- Naoko Sumitani, Hirotoshi Koizumi
- 日本商環境設計家協会 JCDデザイン賞2013 金賞 小坂竜賞