照葉の家
急な坂道に面した住宅である。敷地は東西に細長く、東と北面は公園に接し良好な環境を有するが、坂上の南と西面は背の高いマンションがそびえ立っている。そこで南側に縦導線を細長く固めて北側の公園に開かれたLDKとした。
最大の懸念は北向きLDKの採光であった。東側の自然光だけでは、午後はどうしようもなく暗いことが予想された。そこで敷地北側に接したクスの大木(幹の直径1.4m、葉張り11m)に着目した。この常緑の木は照葉樹と呼ばれ、葉はクチクラ層というロウのような物質がコーティングされており、極めて反射率が高い。そこで北側の外壁を内に倒してクスの木に光を通し、さらにその外形を木構造による逆円錐体として、この天然のレフ板に光を集めることにした。そしてクスの艶葉が太陽の光エネルギーを吸収した後の、緑がかったやわらかな光を、横連窓によって室内に取り込む計画とした。真珠庵の庭玉軒等、日本古来の茶室には、寒椿の艶のある葉に太陽光を当てて、室内に独特の光を取り入れる知恵があったが、これはそのような庭と建築の関係性の建築的実践である。
北側のクスの木の緑陰には涼しい空気が滞留している。そこでLDKの吹き抜け上部にハイサイド窓を設けて、温度差と気圧差によって上昇気流を起こし、この涼気を室内に引き込んでいる。
公園のクスの大木を環境装置としてとらえ、木のために陽光を確保しつつも、自らのために快適な環境を創造すること。クスの木と建築が共存しながら互いに恩恵を享受する家である。
- Completion
- 2016.06
- Principal use
- Residence
- Structure
- RC+S+T
- Site area
- 165㎡
- Total floor area
- 351㎡
- Building site
- Tokyo
- Structure design
- yAt structural design office
- Contractor
- Shiraishikensetsu
- Team
- Kohei Taniguchi, Takashi Yamaguchi
- 第13回 モダンリビング大賞