House SH
独立して間もない頃に設計した小さな住宅である。まず道路側に駐車場をとり、敷地いっぱいに建物を計画した。最大の問題は、唯一開放できる面が北側道路のため、室内に直射日光を導くことができないことだった。しかも、道路の向かいにはマンションの南面バルコニーが並んでいて、プライバシーの問題上、道路側に開口を設けることは難しかった。
そこで道路側の外壁には窓を設けず、トップライトによるライトウェル型の採光方式と、日光が地下まで届くように設計した。特に、30 ㎡に満たない小さなリビングは明るい光で満たし、広く感じることのできる空間が求められた。そこで法定の建蔽率である60%を最大限利用できるように、リビングの壁を内側から押し出して建蔽率59.9%のところで止めた。
その結果生まれた柔らかな曲面壁は、無限の奥行きを持つことになった。そこにトップライトからの光が反射して、部屋の奥にやわらかく届くのである。壁の奥行きや高さがグラデーション状に変化するため、浅い部分であれば子供が、深い部分であれば大人が、自分の体型やふるまいに合う場所を能動的に発見できる。実際、住人の女の子はこの窪みによじ登ったり、滑り台にしたりして遊んでいる。
この建物は、ふるまいの手がかりにあふれ、使うほどに体が馴染む。そこでは、建物と人間の関係がより一層密接になり、様々な使い方や意味、予想もしないふるまいが生まれる。建築と豊かな関係を持ちながら、愛着を育んでいく住宅である。
- Completion
- 2005.11
- Principal use
- Residence
- Structure
- Reinforced Concrete
- Site area
- 41㎡
- Total floor area
- 87㎡
- Building site
- Tokyo
- Structure design
- Shuji Tada Structual Consultant
- Contractor
- Higashiyama Koumuten
- Team
- Momoko Kitsuji
- インテリアプランニング賞 最優秀賞・国土交通大臣賞
- INAXデザインコンテスト 銀賞