In the Corners of this House
敷地は北東道路に面した林の中にあり、南西に下る急傾斜の手前に小さな平地があった。そこに119㎡の矩形の平屋を置いて道路からの音をブロックし、窓からは南・西側の美しいモミジやサクラの眺望や、寒冷地にとって貴重な日照を得ることが早い段階で決まった。
熱を奪われにくい矩形の平面で、南西側の窓は森に向かって最大限の開口を確保した。
玄関には浅間石と、茶室などで用いられる錆丸太を設えた。
外壁はスギ羽目板を裏面で使い、縦張りとした。下部は、南側の基礎の高さに合わせた砂利の洗い出し仕上げとした。
建主はアーキテクチャーローやアートローを扱う弁護士とその家族で、この山荘にアーティストの舘鼻則孝氏によるコミッションワークと建築の共創を望んだ。われわれは長年、建築を通して人びとのふるまいを誘発し、それを複数の人の間で呼応させるデザインを目指してきた。そこで、この風景とアートを引き立てるシンプルな建築に対して、人のふるまいによって立ち上がる感覚を大切にしようと考えた。それらを顕在化するには、むしろこの抑制された形態表現が好都合だった。
リビングの壁は和室に向かって窄まり、隣の寝室の面積を確保し、南側からの視線を和室へ誘導する。
同じモチーフを透過度の異なる障子紙で表現した障子によって、空間的奥行きを作り出した。
床の間の下地窓にはペアガラスの内側に光学ガラスのブロックを積み上げている。
この地域の山岳信仰に合わせて、舘鼻氏には噴煙の中で火山雷が轟く浅間山の絵画を製作してもらい、浅間山方向に設けた和室の床の間に祀った。
寝室の書斎コーナーの小窓を開けると、下地窓越しに和室とつながる。
内部は緩やかな傾斜地に沿うように、ダイニングキッチンとリビング、和室、床の間と、床レベルを4段階に分けた。費用のかかる高基礎を避けると同時に、和室の床座と、ソファやダイニングチェアの椅座の目線高さをぴったりと揃えるためである。また、これに寝室内の書斎を加えて、ダイニング、リビング、和室、書斎の4つの居室に、窓辺のある居心地のよい入隅(コーナー)を設け、それぞれがキッチンコーナーを介して視線が繋がるプランとした。コーナーは外に開かれた場所でありながら、穏やかな落ち着きを与える。背後が包まれるような安心感があり、誰もが寄り付きやすい優しい場所である。各人がそれぞれのコーナーに座れば、互いに適度な距離感と場所の領有感をもちながらも、いつでもアイコンタクトができるような繋がりが生まれるだろう。
鉄分が多く風化した表面と内部との色の違いが美しい、皮付きの伊達冠石テーブル。
ダイニング、リビングそれぞれに窓辺のある入隅を設けた。垂木はアールをつけ、柔らかな印象を与えた。
南の角には玄関と同じヒノキの錆丸太を設え、周辺の木立 と連続させている。軒先で折れた屋根が、内外の垂木の連続を視覚的に強調する。
コーナーを背にする人のふるまいと目線が互いに呼応することで生じる、独特の一体感や居心地のよさ。写真や言葉では表現し得ないものの創出を目指した。
建物は周りの樹木の枝にぶつから ないように平屋とし、軒先はテーパーをかけて枝の下に潜り込ませた。
- Completion
- 2021.10
- Principal use
- Guest house
- Structure
- Timber
- Site area
- 1,428㎡
- Total floor area
- 108㎡
- Building site
- Gunma
- Structure design
- Kanebako Structural Engineers
- Construction
- Daiichi Kensetsu Co.
- Team
- Shunichiro Sasaki, Aki Nishida