NasuTepee
敷地は栃木県那須町の林の中にある。施主は林の木々を極力切らずに、緑に包まれた建築を望んだ。そこで内壁沿いのスペースを座ったり寝たりするための天井高の低い場所とし、内壁を斜めに倒すことにした。その結果、天井高さ最大8mの空間でありながら、立方体と比べて三分の一の容積の三角錐空間が生まれた。
ただし林の下は枝葉に隠れて少々薄暗い。そのため我々は、直射日光を得るために高い天井とトップサイドライトを設けることにした。樹木の枝に沿った外形は、林の木を極力切らずに建設することを可能とした。
構造は木造軸組み工法で、稜線に配置した部材が全体としてトラス効果を生み出し、隣棟同士が支え合う構造となっている。材料の方向がそのまま力の流れに沿うため、結果として柱・梁を垂直力・水平力に分解する通常の軸組み工法に対して、1/5の変形量に抑えることができた。リビングには床暖房と空調、暖炉、そして冬期には頂部にたまった暖気を吸って床下から吹き出す換気システムを設けて、快適な空気環境を実現した。
その結果、縄文人の竪穴式住居やネイティブアメリカンのティピー、モンゴリアンのゲルなどの住まいに見られる、原初的な空間となった。家族が自然と背の低い壁際に座ることで、互いに向かい合い、見つめあって暮らす形式である。建築がふるまいを導き、そのふるまいが家族の絆を強固にするのだ。
二階のゲストルームへの扉は、二枚のガラスの間に周囲に自生する植物を挟むことにした。アケビやノジスミレ、ニリンソウ、ゲンノショウコ、千鳥草。ガラス戸の向こうに設けた窓のおかげで、色とりどりの花たちが光を透かして輝くはずだ。
林の中でキャンプをしているような、自然と融合した暮らし。木々や人のふるまいにそっと寄りそう空間は、そこで過ごす人々にあたたかく包み込まれるような感覚をもたらすだろう。
- Completion
- 2013.11
- Principal use
- Residence
- Structure
- Timber
- Site area
- 1,443㎡
- Total floor area
- 186㎡
- Building site
- Tochigi
- Structure design
- MI+D architectural structure laboratory
- Contractor
- Fukaya
- Textile coordinate
- Yoko Ando
- Team
- Yuichi Tanaka, Yasuhiro Otani, Sawako Watanabe