Necklace House
山形県の豪雪地域に建つ個人住宅である。施主は雪かきや積雪による湿気に、悩まされない住宅を望んだ。そこで各部屋を構造壁の表裏に交互に浮かせて、隣の部屋同士が最小接点でつながるネックレスのような建築とした。最大積雪2mの上空を浮遊する各部屋は、光と風に満ちた環境となった。廊下は長くなるが、家族はそれぞれの部屋に、「お出かけ」するような感覚で移動できる。
それぞれの部屋は、木造の寝室棟、大トラスのリビング棟、防水膜を透かした1600個の窓のある浴室、透ける漆の和室というように、規模や用途に応じて仕上げや構造の異なる部屋が、個性豊かなビーズのネックレスのように連なっている。それぞれ浮遊した離れのようでありながら、外に出ることなく移動が可能である。
浴室は曇天の多い冬場でも明るい光に満ちた空間である。大きな窓を設けても、覗かれたり結露で曇って窓周りが濡れてしまうので、直径数センチの小さな窓を無数に設けることにした。ただし、これら全ての小窓にサッシを取り付けて止水処理を施すのはコストがかかりすぎる。そこで透明な防水剤を使ってサッシのない窓を作ることにした。造船職人の力を借りて、分厚い鉄板に直径4cm以下の3種類の穴を約1600個開ける。次に、内側は洗い場の水、外側は雨水を防ぐために、内側から透明のFRP防水を施す。FRPは鉄板の防錆、断熱にも役立つことになる。天井、壁、床に設けられた無数の窓は、まるでパールのように輝き、光のシャワーとなって全身に降り注ぐのである。
和室は総漆塗りである。窓や内部のガラス壁に対して無着色の漆を塗ることで、漆本来の美しい質感や色合い、光の透過を楽しむことができる。塗りの回数を5段階に変化させることで、透過光のグラデーションをつくり、隣の漆塗りの板壁となめらかに連続させている。反射と透過が同時に起きる、不思議な質感の空間である。
- Completion
- 2006.9
- Principal use
- Residence
- Structure
- RC+S+T
- Site area
- 2,043㎡
- Total floor area
- 385㎡
- Building site
- Yamagata
- Structure Desgin
- Shuji Tada Structual Consultant
- Constructor
- Yamashita Kensetsu
- Team
- Yasuaki Hori