Optical Glass House
広島市の中心部に建つ個人住宅である。周囲には高層ビルが建ち並び、8車線の前面道路には車や路面電車が行き交っている。そこで、プライバシーを守り静寂な空間とするために、道路側に前庭と光学ガラスのファサードを設けた。どの部屋にいても庭を眺めることができ、重量のある光学ガラスの壁が音を遮る。その向こうで電車や車が音もなく行き交い、滲んだ風景が生活を彩っている。
東からの陽光はガラスの屈折によって美しい光紋様を床や壁に描き、木漏れ日が床に踊る。水盤を兼ねたトップライトは雨の水紋をエントランスの床に描く。金属をスパッタリングした超軽量カーテンは、光をまとってゆらめくことで建物前後の2つの内庭の温度差によって風が起こっていることを教えてくれる。都心であっても一日の光や街の変化、季節の移り変わりを感じながら暮らすことのできる住宅である。
約6000個のガラスの塊(50mm×235mm×50mm)をファサードに用いたのは、単位面積あたりの質量が大きく遮音効果がありながら、都市の風景を遮断せずにクリアで開放的な庭を作るためである。そのため、光学ガラスの原料であるホウケイ酸ガラスを主体とした透明度の高いガラスを、キャスト(鋳込み)法で製作している。この工法はガラス内の残留応力の除去のための緩やかな除冷と、厳しい寸法精度を要するため、制作は困難を極めた。
ファサードは、幅8.6m高さ8.6mで大面積のため、奥行きわずか50mmのガラスでは到底自立しない。そのためファサード頂部の梁から暖簾のように吊ることにした。まず梁に74本のステンレスのボルトを吊し、そこに地震力を負担する水平部材を千鳥状に固定。水平部材は40mm×4mmステンレスのフラットバーで、厚さ50mmのガラスブロック内部に収まるようにガラスブロックを掘りこんでいる。その結果、目地幅をシール施工の最小寸法である6mmにすることが可能になり、軽やかで滝のような透明感のあるファサードが実現した。
- Completion
- 2012.10
- Principal use
- Residence
- Structure
- Reinforced Concrete
- Site area
- 244㎡
- Total floor area
- 385㎡
- Building site
- Hiroshima
- Structure design
- Yasushi Moribe
- Contractor
- Imai Corporation
- Textile coordinate
- Yoko Ando
- Team
- Atsushi Ikawa
- ar+d Awards for Emerging Architecture, First prize