録museum
森の中を散策するように過ごす美術館である。施主は小さな絵のための展示室と地域のサロンとなるカフェを望んだ。そこで枝葉がまんべんなく広がる林と丘を計画して、木の下に人びとが自然と集まる場を提案した。
地元の造園業者が売れずに持て余している大木を見て廻り、設計前にどの樹木をどの角度に植えるかを決定。互いの枝が重ならないようにグリッド状に配置して、敷地上空が満遍なく枝葉で覆われる計画とした。次に、木の枝ぶりを三次元で測量してコンピューター上にモデリングして再現。そのデータを用いて木々の隙間を縫うように展開する建物を設計した。
あらかじめ測量した木の下枝をピクチャーウィンドウの借景として取り込んでいる。
日本の昔の民家が、建物と庭の樹木を合わせて良好な室内環境を作り出したように、場所によって様々な種類の木を配置した。 敷地北側には冬の北風を防ぐための常緑樹、そして南側には夏の日差しを遮り、冬は陽を通す落葉樹を配置し、その間を縫うように建物を展開させている。
例えば入口は、上空の枝を避けるために、思わず首を縮めてしまうような天井高である。日本の茶室のにじり口が、おじぎに似たふるまいを誘発することで人を謙虚な気持ちにさせるように、ここでも客が少し頭を垂れることで素の自分に戻って、絵とじっくり向き合うことを意図している。
展示室は、小さな絵に集中できるようにホワイトキューブとしながら、天井だけは周囲の木々の形を反映している。内部は身体と建築と樹木が寄り添うような親密な空間がたくさんできている。
カフェでは木々の下で日差しを避けたり、雨宿りをするのと同じふるまいが生まれている。枝を避けて歩き、木陰で休みながら、森の中を散策するように絵を鑑賞できる美術館である。
- Completion
- 2010.09
- Principal use
- Museum
- Structure
- Timber
- Site area
- 705㎡
- Total floor area
- 100㎡
- Building site
- 2-23-5, Higashijonan, Oyama Shi, Tochigi
- Structure design
- yAt Structural Design Office
- Contractor
- Maruyama Kogyo
- Team
- Yasuhiro Otani, Junpei Kawaji
- 日本建築学会作品選奨
- JIA環境建築賞2012 最優秀賞
- 第11回 環境設備デザイン賞 環境デザイン部門 最優秀賞
- ar+d Awards for Emerging Architecture, HIGHLY COMMENDED