狭山樹林葬地
2つの狭山の作品に連なる建築が完成した。他の2作品と同様、残された人々の振る舞いに空間を寄り添わせ、身体を委ねられる建築を目指した。
管理休憩棟と礼拝堂に続く三部作の一つとして、狭山湖畔霊園内に計画された墓地である。東京都民の水がめと呼ばれる多摩湖・狭山湖の水源を涵養する森が滋養した水に人は生かされ、死後はこの森の大地に還る。そのような循環の死生観のもと、祈りの対象を森に見出した。元々立っていたクスノキと森を墓標とし、森を遥拝することで、森に還った故人を偲び、対話できるような建築を目指した。
中心には高さ1mの緑の小さな丘状の墓所と、祈りやお参りのための礼拝所を60m先の森に向け配置した。礼拝用のベンチに腰を下ろすと、緑の丘が構内道路や墓地を隠し、森と直接繋がって見える。屋根でも壁でもある放物面が、祈る人を背後からくるむ。
パラボラの焦点をベンチに座る人の頭の位置に合わせ、そこだけ音量が上がり、覚醒したような感覚を生み出す。
集音効果をできる限りに引き出すために、パラボラの曲率を計算した。
御影石のベンチの座面は、座る位置を特定して頭の中心が放物面の焦点にくるよう削り出されている。建築が遠方からやってくる弱い波長や音を一点へと集めるパラボラアンテナの役割を果たし、座ると突然、遠方の森の枝葉の擦れる音や鳥や虫たちの鳴き声が覚醒したように聞こえ出す。それはとても個人的な体験である。森のささやきが座った人にだけ届き、語りかけた言葉は森へ響くだろう。
小さな緑の丘によって、狭山の森が目 の前に現れ、視線の先にある遠くの森と の繋がりを図る。
人の声も森へと届くため、独特な 音場が形成されている。
- Completion
- 2022. 08
- Principal use
- Tree burial
- Structure
- S
- Total floor area
- 87㎡
- Building site
- 82050 Kamiyamaguchi, Tokorozawa, Saitama
- Structure design
- ans
- Construction
- MURAYAMA CONSTRUCTION CO,LTD.
- Team
- Yang Liu