Takenoko chair
床柱の皮付き丸太を斜めに削って面取りし、畳を入れやすくした納まりを、茶人たちは古くから「タケノコ」と呼んできました。 これは床を貫くものとして忌み嫌われる家屋内の筍の子を、あばら屋の風情として愛するような、侘び寂びの感性の現れです。 我々が建築に丸太を用いるのも、素材の美しさはもとより、自然に合わせて暮らす日本人の自然主義的美学が空間に立ち上がるからです。 そのような場に相応しい椅子を作ることが我々の願いでした。
ダイニングチェア
ラウンジチェア
最初に構想したのは、椿の皮付き丸太を日本の木造軸組建築のように水平垂直に構成した、小さな空間性を持つ椅子です。 座り心地や使い勝手を追求し、正面に回りこむときにつま先があたる後脚や、 座ったときに踵が当たりやすい前脚を斜めにカットすると、「タケノコ」が現れました。
皮付きの椿丸太で制作したコンセプトモデル
また、アームをテーブルに掛けて椅子を浮かせることで、テーブル下の掃除がしやすいことにも拘りました。 禅寺の修行の一つに掃除があるように、場を美しく清めることは、私たちがどう生きるかという哲学的で宗教的な実践なのです。 「場を掃き清め、自然に合わせて暮らすこと。」そのような慎ましい生活のための椅子が誕生しました。