Tokyo International Airport Terminal2 Extension

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 東京国際空港国内線第二旅客ターミナル増築棟のデザインを監修した。空港独自の体験価値の創造と東京らしさの表出、商機能の強化という視点で、事業企画から店舗構成、家具、照明から壁の素材等、細かなディテールに至るまで設計した。

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 公共交通施設はヒューマンスケールを逸脱しがちである。そこで2階の出発ホールには、正方形の縁台のようなソファを製作した。その上部には、小さな段差がある。客は背もたれにしたり、荷物を置いたり、自由に使い方を発見できる。四周に座った大人たちが作り出した中央のスペースで、小さな子どもが遊んでいることもある。出発ホールの巨大な空間の中に、見知らぬ人々の背中が期せずして作り出した、小さくてあたたかな空間が生まれている。

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 3階の飲食ゾーンでは店舗をテイクアウト型に最小化し、吹き抜けに面した廊下を客席ゾーンとして拡大。旅客がこれから飛び立つ空を眺め、行き交う雑踏を見下ろすことができる、空港らしいラウンジ型の空間とした。共用部は白い大理石の壁で統一し、その前には250種の異なる椅子を配置して、客の自由なふるまいを引き出した。一般的にこのような場所では同じ椅子が大量に並べられるものだが、それでは自分が座った椅子や滞在した場所の記憶が残りにくい。しかし、それぞれ異なる椅子であれば、自分が過去に座った椅子の記憶が積み重なって、この場所への愛着が生まれるはずだ。

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 商業的にも椅子自体が賑わいを作り出すので、閑散時の寂寥感を払しょくできる。各椅子はテーブルごとに形・構造が相似したものを集めている。例えば、中国の明時代の椅子と、それに影響を受けたウェグナーのYチェアやスタルクのミミングアームチェアを並べることで、椅子の歴史やデザインの変遷を感じることができるだろう。

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 空港はこれまで、見知らぬ人々が互いに気にも留めず去っていく場所だった。ここでは隣の人がどの椅子を選び、譲り合うかによって、その人の嗜好や疲労度、そのグループの中の関係性が想像できる。人物観察がたまらなく楽しい場所である。我々は他者への想像力の喚起こそ、これからの公共空間に必要なことだと考えている。

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 我々は商環境コンサルタントとして、出発ロビーの商空間化のために、第1ターミナルビルの出発ロビーにあったJALラウンジをその上階のANAオフィス跡地に移設することを提案した。JALサクララウンジ&ダイアモンドプレミアラウンジを移設する空間は、約5,500㎡という広大な面積を誇るにもかかわらず、2.5mという低い天井がネックだった。天井まで壁を立ち上げて部屋を細かく分けると、見通しが悪くなりやすい上に、入口付近の椅子から埋まって混雑し、圧迫感や音の反響が生じてしまう。

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 そこで、床から腰の高さまでをソリッドボリュームと見立てて、旅客が移動・滞在する部分をくり抜き、腰より上を水平方向に抜けのある空間とした。それにより、立って移動している客には滑走路への視界とラウンジ全体の見通しを確保し、空いている場所が一目でわかるようになった。座っている人には、他の客や鞄などの雑然とした要素や窓のフレーム、既設の床置き冷暖房機器が腰壁の背後に隠れて、視覚的な混雑感が緩和される。さらに腰壁は音を吸収するため、静かな環境となった。

 腰壁の高さはプライベート感を保ちつつ、客が座っても完全に隠れてしまわない絶妙な高さとし、席探しの効率やサービスの効率を担保した。

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 しんと静まり返った空港ラウンジでの待ち時間。滑走路の一大パノラマを眺めた後は、ひとり小さな空間にこもりながら地上の安心感を得てゆったりと過ごす。空へと飛び立つ前に、巣のような空間に「こもる」こと。この対照的な体験こそが、空と地上の狭間に位置するエアポートラウンジにふさわしい。見上げると、青い空。外の音が遠くに聞こえ、自分が叩くノートブックのキーボードの音や服が擦れる音が、いつもより近くに聞こえる。鳥の巣のように、自分の身体に近い小空間。羽を休める鳥のように自分と向き合いながら、これから飛び立つ空を想うのだ。

Completion
2010.10
Principal use
Airport
Structure
S + SRC
Site area
943,664㎡
Total floor area
49, 381㎡
Building site
Hanedakuko, Ota-ku, Tokyo,
Contractor
TAISEI
Planning and Coordination
TRANSIT GENERAL OFFICE
Detailed Design
Azusa Sekkei
Book Direction
Yoshitaka Haba/BACH
Team
Ikuma Watase, Tomohiko Kimura