東急プラザ表参道原宿
表参道の路上には、ケヤキ並木の木漏れ日が揺れている。我々はこの建物と樹下空間が一体化した環境こそが、表参道の固有性であると考えた。そこで建物と樹木が一体となったボリュームを街並み上空に浮かせ、木漏れ日の空間を上部へ段階的に連続させた。これは鳥や蝶などが屋上の森に昇ってくることを助けるだけでなく、商業的にも屋上庭園が人々の訪問動機となり、シャワー効果と呼ばれる、最上階から下階への客の流れをつくるのである。樹木は一番日当たりがよく、交差点のどこからでも見える外周部と屋上に、設計に先だってレイアウトした。その結果、室内は木々の枝葉によってえぐられ、屋上広場は根鉢の分隆起してしまった。しかし我々は逆に使用者やテナントがこの不自由さを愛し、ポジティブに使っていくことが、樹木と人の密接な関係を作り出し、今の時代にふさわしい自然と融合する商業施設となると考えた。
1階のテナント価値を最大化するために、B1階、1階、2階 の3 層を一体化した独立型路面店の形式としている。路上の3つの路面店は建物と切り離された自立的ファサードを可能とすることで賃料を最大化させ、ブランドブティックが並ぶ表参道の町並みと調和をはかっている。ただし問題となるのは、3 階以上の階への客の誘引である。エスカレーターの昇降時間の長さも客にとって抵抗感がある。
そこで我々は多面体ミラーによる体験型の動線空間を提案。着飾った人々が万華鏡の中のカラフルなパーツのようにめくるめく反射を繰り返すことで、ファッション特有の高揚感や賑わいを創出。ミラーが間口を実際より広く見せる上に、登っていく人々が反射によって倍増して見えるため、行列効果も期待できる。この体験型動線空間によって人々を強力に誘引することで、3階をグランドフロアと同等の価値となることを狙っている。そしてその先のアトリウムではトップライトから木漏れ日が落ちてきて、表参道特有の買い物体験が始まるのである。
屋上は、根鉢の段差を多角形のステップで均すことで、すり鉢状の広場となった。これは階段や椅子、テーブルとしても使える多義的な形態であり、使う人が身体的に建築と関わるきっかけになる。特に我々が惹かれたのは、人が自然とすり鉢空間の底部に体を向け、中心を見つめることであった。木漏れ日の下で小さな無数の入隅に人々がはまって、視線の先を共有するのである。
隣の人々と対面する緊張感がほどけて、ふと気づけば皆が一緒の輪になっている。ネット上のショッピング空間が肥大化する現在、商業実空間では、ネットで体験できない価値を最大化することが求められているが、我々はこの身体性と場所性に満ちた快適な環境の中で感じる、ゆるやかな一体感こそ、これからの商業施設に必要なことだと考えた。
この建築は、かつてこの地にあったセントラルアパートメントのミラーの外装と、表参道のアイコンだった石垣の記憶を形象化している。
- Completion
- 2012.03
- Principal use
- Commercial
- Structure
- SRC+ RC+S
- Site area
- 1,771㎡
- Total floor area
- 11,852㎡
- Building site
- 4-30-3, Jingumae, Shibuya Ku, Tokyo
- Structure design
- TAKENAKA
- Contractor
- TAKENAKA
- Planting Design
- Mitsuko Suzuki / Siiaru-Club
- Team
- Satoshi Toda, Natsuki Mamiya, Atsushi Igawa, Hirotoshi Koizumi, Tomohiko Kimura, Kohei Taniguchi, Yuji Okanish
- 日本商環境設計家協会 JCDデザイン賞2013 大賞
- 2014 VIVA Best of the Best Awards, Honoree
- 2013 Asia Pacific Shopping Center Awards, Gold Prize for design & development excellence