ZOZO本社屋
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの本社屋では、食事や保育などの諸機能を社内で賄うのではなく、街全体をオフィスと捉える「領域型オフィス」として、周辺のカフェや公園、保育所、ジム等を街の中にアウトソーシングし、街と共に成長するオフィスを目指すことにした。社員の街に対する関係性構築のふるまいが本業のビジネスへの理想的なフィードバックになると考えたからである。そのあり方が秘匿性の高い執務・会議空間以外を地上階に集約する、コンパクトなオフィスを可能にした。
通過交通が多く熱負荷の高い南西道路側は、建物のセットバックにより並木や広場を設けて街並みに寄与することにした。千葉大学正門と駅を結ぶ学園通り側はストリートとの一体化を目指し、南北方向に開いた吊り屋根の無柱空間と大庇を設けた。今やファッションはストリートから生まれると言われているが、往来する人びとのコーディネートやしぐさの観察が習慣化できるオフィスである。
タイルカーペットの模様は歩道のピンコロ石の舗装に合わせている。
柔らかな木の天井に合わせて、曲木の自然な曲線と弾性を生かしたオリジナルチェアは天童木工での販売が決まった。
2.0～8.0mの天井高が、ひとつの空間に空港のようなパブリック性と住宅のようなプライベート性をグラデーション状に生み出している。スキップ状の床と屋根は、目線のずれや人とのほどよい距離感、光のまわり方といった質の異なる空間を生み、仕事内容や活動によって自由に居場所を選択できる環境を支援する。
3枚の屋根の隙間から時間帯によって異なる光が差し込んでくる。
竹中工務店と協働で、柱等の障害物の無い吊り構造屋根の大空間の内部空間を得るため屋根は半剛性吊り屋根構造を採用した。吊り屋根に生じる引張力を両サイドのバックステイや心柱が水平力を負担することで、梁せいを350㎜まで抑え大スパンでありながら軽快感のある屋根を作り出している。執務者にとって快適な室内環境を実現するため、季節によって空調方法を切り替える計画とした。夏期は屋根の大部分に行き渡せた不燃段ボールダクトから冷気を吹き出し、部屋全体に冷気が行きわたるようにすると共に、放射空調的な効果を意図し、屋根面からの熱を軽減している。冬期には床面からの吹き出しによる居住域空調を行い、不均質な気積の空間の中でも快適性を確保した。
細い木材を三層に織り込んだ繊維質な屋根と壁は、大きな布のようにたっぷりと垂れ、人々を柔らかに包みこむ。その内側の紙製の空調換気ダクトや吸音材は通気性や音環境を良好にして、ZOZOらしい「着心地のよい服のような建築」となっている。
リモートワークが働き方の選択肢のひとつとなって、わざわざ出社することの意味は大きく変化した。企業理念やビジネスに繋がる感性とふるまいが自然と身につく空間と時間。そして互いの顔が見える「ひとつ屋根の下」で共に働くことによって生まれる一体感。プロジェクトへの熱量を仲間と共有することや濃密なコミュニケーションの蓄積こそ、このオフィスが求めた機能である。
- Completion
- 2020.12
- Principal use
- Office
- Structure
- S+RC
- Site area
- 1984㎡
- Total floor area
- 3622㎡
- Building site
- Chiba
- Structure design
- KAP, Takenaka Corporation
- Architectural design
- Hiroshi Nakamura & NAP, Takenaka Corporation
- Team
- Soichiro Takai, Takeshi Ito, Takeshi Suzuki
- DFA Design for Asia Awards 2021 | Grand Award | Gold Award | Environmental Design | Workspaces
- JID AWARD 2021 大賞
- 2021年度 グッドデザイン賞
- 千葉市都市文化賞2021 グランプリ
- 2021年度 第34回日経ニューオフィス賞 クリエイティブ・オフィス賞
- 2021 IIDA Global Excellence Awards | Corporate Space Large Category Winner
- 第28回（令和3年度）千葉県建築文化賞 最優秀賞
- 2021年 第31回 日本建築美術工芸協会賞（AACA賞）奨励賞
- 2022年照明施設賞
- iF DESIGN AWARD 2022
- 日本空間デザイン賞2021 オフィス空間部門 銅賞
- IIDA 2021 Global Excellence Awards Category winner
- Architecture MasterPrize 2022, Workplaces Interior, Best of Best
